意外と知らない●イオン交換樹脂の再生利用

イオン交換樹脂は再生することで繰り返し使用できます

再生

イオン交換樹脂の最大の特徴は、一度交換して捕捉したイオンを放出させて、交換する前のイオンに再び戻せることです。これを「再生」と言い、再生することで一度使用したイオン交換樹脂は繰り返し使用できます。

純水製造用途では、塩酸や水酸化ナトリウム水溶液等の酸・アルカリ溶液が再生溶液として用いられ、その濃度は一般的に数%以上の高濃度溶液を使います。一方、軟水器向けの陽イオン交換樹脂は、高濃度の塩水(NaCl溶液)で再生します。

 

脱塩

水中の塩分をイオン交換樹脂により除去して純水を製造する工程を「脱塩」と言います。脱塩に使う樹脂のイオン形は、カチオン交換樹脂では水素イオン形(H+形)、アニオン交換樹脂では水酸化物イオン形(OH形)を示す、いわゆる再生型の樹脂を用います。

脱塩とは文字通り、水中の塩類(Na+、K+、Ca2+、Mg2+、Cl、HCO32-、SO42-、NO3など)をイオン交換樹脂が交換することで水中から除去しますが、それと等量のH+/OHを水中に放出するので、塩類を水(H2O)に変換することができます。

 

交換容量

イオン交換が進むと最終的には樹脂のイオン形が飽和してこれ以上交換できなくなり、この状態でさらに通水を続けると、処理水の塩類濃度が急激に上昇して水質が低下します。単位体積あるいは単位重量当たりのイオン交換樹脂が交換できるイオン当量を「交換容量」と言います。

実際に通水してある程度の水質を維持できるイオン当量を「運転交換容量」あるいは「貫流交換容量」とも言いますが、これらの容量を越える前、すなわち水質が低下する前に、酸・アルカリ溶液でイオン交換樹脂を再生型(H+/OH)に戻す必要があります。

 

再生効率

再生効率(再生のし易さ)は官能基や母材構造によって異なります。例えば、強塩基性アニオン交換樹脂にはⅠ型とⅡ型の官能基があり、Ⅱ型は化学的に不安定ですが再生効率が高いため、再生溶液のコストを抑える目的で採用されることがあります。弱酸カチオン交換樹脂や弱塩基アニオン交換樹脂は、強酸カチオン交換樹脂や強塩基アニオン交換樹脂よりも、高い再生効率を示します。またマクロポーラス型よりゲル型の方が高い再生効率が期待できます。

再生操作によりイオン交換樹脂のイオン形を変えると、樹脂母材の膨潤・収縮が認められます。H形の強酸性陽イオン交換樹脂やOH形の強塩基性イオン交換樹脂は、それぞれNa形・Cl形に比べて膨潤する傾向にあります。すなわち、再生工程では急激にイオン交換樹脂が膨張し、脱塩工程では徐々に収縮し、これを繰り返すことで母材にひずみが生じ、樹脂に亀裂が入ったり破砕する可能性があるということです。再生工程では、再生剤や洗浄水の急激な濃度変化が生じないように運転することが大切です。

 

選択性

液体中にさまざまなイオンが混在している場合、各イオンの樹脂への交換のされ易さに差があります。これを「選択性」と言い、これもイオン交換樹脂の大きな特徴です。一般的に、イオンの価数が高いものほど、また原子・分子サイズの大きい物ほど選択性が高くなり、すなわちより交換されやすくなります。

選択性の一般的な順列は下記の通りです。ただし、イオン濃度が高くなると選択性の差が縮まったり逆転するので、前述の通り高濃度の酸・アルカリ溶液で再生することができるのです。

カチオン:  Li+(<H+) < Na+ < Rb+ < Cs+ < Mg2+ < Ca2+ < Sr2+ < Ba2+
アニオン:  F(<OH) < 酢酸 < ギ酸 < Cl < SCN < Br < CrO42- < NO3 < I < SO42-

比較的安価で入手しやすい酸・アルカリ溶液を使えば何度でも繰り返し機能を発揮し、低コストかつ継続的に高いパフォーマンスが期待されるのが、イオン交換樹脂の最大の特徴です。