意外と知らない●強塩基性アニオン交換樹脂のイオン形変化に伴う体積と色の変化

液体のイオン類を交換するのがイオン交換樹脂の最大の役割ですが、イオン交換樹脂そのものは、あらかじめ液中のイオンと交換して放出するイオンを保持しています。これをイオン交換樹脂の「イオン形(ionic form)」と言います。

 

イオン交換樹脂のイオン形

軟水器や純水製造装置などで水と接触するとイオン交換が進み、樹脂のイオン形が徐々に変化します。

例えば純水装置に使われる強塩基性アニオン交換樹脂のイオン形は、もともと再生形(OH形)といわれるイオン形ですが、通水処理が進むとともにイオン形も次第に塩化物イオン(Cl)や重炭酸イオン(HCO3)などに置き換わります。このようにイオン交換樹脂のイオン形が変化すると、樹脂の母材(粒子あるいはビード)の物性も大きく変化します。

樹脂ビードの膨潤・収縮はその代表例であり、イオン形の変化を何度も繰り返すとビードも何度も膨潤と収縮を繰り返すので、割れや破砕が発生しやすくなり、樹脂の耐久性や装置の設計に大きく影響します。また樹脂を投入する容器(樹脂塔)も、イオン形変化による最大容積に合わせて設計する必要があります。

 

動画で見る樹脂の外観変化

下の動画は、アクリル容器に入れたゲルタイプの強塩基性アニオン交換樹脂(約25mL)に、塩酸・水酸化ナトリウム溶液・純水を交互に下から上に流し、樹脂の外観変化をタイムラプスで録画したものです。

塩酸溶液を通液すると樹脂の色が明るくなり体積が減少します。また水酸化ナトリウム溶液を流すと色が濃くなり体積が増えます。

イオン形の変化に伴う外観上の変化は体積変化だけでなく、見た目の色も大きく変化することがわかります。

音声ナシ(0:35)

アニオン交換樹脂のイオン形変化に伴う体積と色の変化
(約80分のサイクル試験を35秒に短縮)

 

水処理工程におけるサイクル運転

実際の水処理工程では、イオン交換樹脂は定期的に再生されて繰り返し利用されています(これを「サイクル運転」と呼びます)。

実際の装置に使用する前に、ラボスケールのサイクル試験装置で樹脂の様子を観察したり、規程回数のサイクルを経験した樹脂の物性試験・性能試験の結果を未使用品と比較すれば、実際の装置で発生する物性・性能変化などの事象をある程度予測することができます。