意外と知らない●イオン交換樹脂の性能指標と試験方法

イオン交換樹脂は液体中のイオンを交換しますが、この性能を表す指標は交換容量をはじめとして特徴的な専門用語で表されます。今回は主な指標の測定法・分析手法について紹介します。

 

体積・容積

交換容量や水分含有率を正しく測定するためには、測定するイオン交換樹脂の体積・容積を精密に量り採る必要があります。

最も簡易な測定法は、メスシリンダーで読み取る方法です。脱塩水あるいは純水に浸漬させたイオン交換樹脂を水と共にメスシリンダーに静かに移し、底部・側面を軽くたたくなどして振動を与えます。メスシリンダーを傾けても樹脂層の上端面が動かなくなったことを確認して目盛りを読み取ります。性能評価には通常、約10mLの樹脂をもちいます。

なおイオン交換樹脂の体積はイオン形によって異なり、樹脂によっては数十パーセントも差が出るため、体積を基準形(H+/OH-)で測定するか、塩形(負荷形)で測定するかは決めておく必要があります。

 

交換容量

交換容量を測定する場合は、まず、イオン交換樹脂を基準形に調整します。

イオン交換樹脂をカラム管に移し、強酸性陽イオン交換樹脂は濃度数%の塩酸溶液を流してH+形に、強塩基性陰イオン交換樹脂は濃度数%の水酸化ナトリウム溶液を流してOH-形に変換させて、基準形に調整します。

純水で流した後、続けて濃度数%の塩化ナトリウム溶液を通液して処理液を回収し、処理液のH+やOH-イオン濃度を中和滴定で測定します。

 

水分含有率

目的のイオン形に調整したイオン交換樹脂を、あらかじめ乾燥重量を測定した専用容器(W1g)に移して遠心分離機で脱水します。脱水した樹脂の重量を測定し(W2g)、定温乾燥機に移して105℃で12時間以上乾燥させます。デシケーターで放冷させたのち重量を測定します(W3g)。

水分含有率(%)は下記の計算式で求めます。

水分含有率(%)=(W2-W3)/(W2-W1)×100

 

外観

イオン交換樹脂の粒(ビード)を光学顕微鏡(倍率20-40倍)で観察します。

視野に約100粒の樹脂を置き、真球状のビード、クラック(亀裂)の入ったビード、破砕したビード、真球でない異形ビードの数を計測し、真球ビードの%値(真球率)を求めます。

 

粒度

樹脂ビードの直径を専用の分析装置で測定します。

超純水・脱塩水中に樹脂を分散させて検出器に連続的に通水し、レーザー光を照射したり画像を連続的に撮影して解析することで、粒子径とビード数の分布が得られます。

 

その他

上記の他にも用途に応じた性能指標と試験方法があります。

例えば、再生を何度も繰り返したイオン交換樹脂は、イオン形の連続的な変化に伴う体積変化によって亀裂・破砕が生じやすいため、再生試薬と塩水を交互に処理したビードの外観を観察することで、耐久性を把握することがあります。

また未使用のイオン交換樹脂の処理水には有機物が含まれるため、限りなく低い有機物濃度が求められる用途のために、カラム管に詰めた未使用樹脂の処理水の有機物濃度を連続的に測定して、目的の有機物濃度を達成するための処理水量を測定することもあります。