弱塩基性アニオン交換樹脂を用いたC O2の捕集
様々な理由から脱炭素化の機運が高まり、排気ガスや大気中の二酸化炭素(CO2)を直接捕集して再利用する様々な技術が提案されています。
低級アミンを官能基にもつ弱塩基性アニオン交換樹脂を吸着剤に用いる技術はその一つであり、その操作の簡便性や高いCO2捕集効率が評価され、大気中のCO2を直接捕集する装置(DAC:Direct Air Capture)に組み込まれ、実用化されています。
弱塩基性アニオン交換樹脂のCO2捕集効率は、樹脂そのもの物性や、通気するガスの条件を変えることで大きく変化します。中でも特に水の影響は大きく、通気する大気の湿度と、樹脂が保持する水分率(重量比)の最適条件がわかれば、CO2捕集効率を最大化することができます。
Purolite® A110のCO2捕集効率への水分の影響
ピュロライトの弱塩基性アニオン交換樹脂Purolite® A110は、重量比で58-66%の水分を保持していますが、事前にある程度乾燥処理をした樹脂を吸着剤としてDACに適用させると、CO2捕集効率が向上することが知られています。しかし、空気の湿度変化と樹脂の水分率の違いでどの程度CO2捕集効率が変化するかについては、個別の吸着剤サンプルをラボ試験で評価し、最適条件を確認することが必要です。
Purolite® A110の水分率(%)と、CO2濃度400ppmvに調製した標準空気の相対湿度(%)を、それぞれ異なる条件で通気試験を実施し、CO2捕集量がどの程度変化するか確認しました。
図1に示す結果の通り、Purolite® A110のCO2捕集量は、樹脂の水分率を10%以下に乾燥させると最大になり、また通気する空気の相対湿度が高いほど顕著に増加することが明らかになりました。この結果から、Purolite® A110をCO2吸着剤として使う場合には、水分率5%まであらかじめ乾燥させた樹脂に、湿度90%以上に加湿した空気を通気させることで、1.5mol- CO2/kg-resin以上の高い捕集量が期待できることがわかりました。
図1 CO2捕集量:空気の相対湿度と吸着剤(Purolite® A110)の水分率との相関
(CO2濃度400ppmに調製した標準空気を室温22-23℃で通気、処理ガスのCO2濃度が200ppmを終点とした)
表1 Purolite® A110 一般物性
ポリマー種別・母体 | マクロポーラス型・スチレン系 |
外観 | 球状ビード |
官能基 | 1級アミン |
イオン形(出荷時) | 遊離塩基(FB)形 |
総交換容量(FB形) | 2.0 eq/L 以上 |
水分含有率(Cl形) | 58 – 66% |
粒度範囲 | 300 – 1,200μm |
均一係数 | 1.7以下 |
最大膨潤率 FB→Cl | 60%以下 |
湿潤ビード比重 | 1.07 |
見掛密度 | 630 – 670g/L |