気相中の炭酸ガスを効率的に除去する弱塩基性アニオン交換樹脂
Purolite® A110およびPurolite® A830Wは、いずれもマクロポーラス型弱塩基性アニオン交換樹脂で、それぞれ1級アミン官能基、複合アミン官能基を有します。
これらは気相中からの炭酸ガス(二酸化炭素)吸着用フィルターとして用いることが可能であり、使用条件により炭酸ガス吸着量は変動しますが、概ね樹脂1kgあたり200g以上の炭酸ガスを吸着することが可能です。
PUROLITE® A110の一般物性
ポリマー種別および母体 | マクロポーラス型・スチレン系 |
外観 | 淡黄色白色不透明球状 |
官能基 | 1級アミン |
イオン形(出荷時) | 遊離塩基 |
見掛密度(概算値) | 670 – 710 g/l |
水分含有率(Cl形) | 60 – 66% |
膨張率(遊離塩基型→Cl形) | 50%以下 |
比重(湿潤樹脂) | 1.07 |
総交換容量(遊離塩基形) | 2.0 eq/L – 湿潤樹脂 以上 |
粒度範囲 | 300μm~1,200μm |
耐用温度 | 60°C(Cl形は100°C) |
有効pH | 0-8 |
PUROLITE® A830Wの一般物性
ポリマー種別および母体 | マクロポーラス型・アクリル系 |
外観 | 淡黄白色不透明球状 |
官能基 | 複合アミン |
イオン形(出荷時) | 遊離塩基 |
見掛密度(概算値) | 690 – 725 g/l |
水分含有率(遊離塩基形) | 50 – 56% |
膨張率(遊離塩基型→Cl形) | 20%以下 |
比重(湿潤樹脂) | 1.10 |
総交換容量(遊離塩基形) | 2.75eq / l – 湿潤樹脂 以上 |
粒度範囲 | 300μm~1,200μm |
耐用温度 | 35°C |
有効pH | 0-9 |
1. 官能基種類、水分含有率の炭酸ガス吸着特性への影響
複数の異なる種類のアニオン交換樹脂を用いて、炭酸ガス吸着試験を実施した結果、マクロポーラス型で高い炭酸ガス吸着効果が得られることが判明しました。
そこで、マクロポーラス型アニオン交換樹脂での比較試験を実施した結果、1級アミン・スチレン系のPurolite® A110は水分率5%以下まで樹脂を乾燥させた状態で炭酸ガス吸着効果が高くなり、複合アミン・アクリル系のPurolite® A830Wでは水分20%以上含有した湿潤状態で高い炭酸ガス吸着効果が得られることが分かりました(図1)。
図1 各種イオン交換樹脂の炭酸ガス吸着量
2. 炭酸ガス吸着能の温度依存性
Purolite® A830Wの処理温度と炭酸ガス吸着量の関係を示します。水分率20%および35%では温度依存性は似た傾向を示し、処理温度が低いほど高い炭酸ガス吸着効果が得られます(図2)。
図2 Purolite® A830Wの処理温度と炭酸ガス吸着量
3. 炭酸ガス濃度と吸着能
気相中の炭酸ガス濃度が高いほど、炭酸ガス吸着量が増加します。炭酸ガス濃度が約5%を超えると、温度が25°Cでは吸着量は約200~250g/kg、温度が60°Cでは吸着量は約150~200g/kgの範囲を示します。25°C、60°Cでは、どちらも炭酸ガス濃度が30%を超えたあたりで、炭酸ガス吸着量が飽和します。(図3)。
図3 Purolite® A830Wによる炭酸ガス濃度と炭酸ガス吸着量
4. 脱離・再生
イオン交換樹脂に吸着された炭酸ガスは、加熱処理することで脱離するため、イオン交換樹脂を再利用することができます。例えばPurolite® A830Wで炭酸ガスを吸着した場合、樹脂を90°Cに加熱し、80%の水蒸気を通すと100%近い再生率を示しました。
10回繰り返すサイクル試験では、10回目の再生後でも炭酸ガス吸着量は初期値を維持することが確認されましたが、アクリル系のPurolite® A830Wはスチレン系のイオン交換樹脂と比較し耐熱性が低いため、高温での再生は注意が必要です。